税金

投資と税金(最低限の知識1)

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 投資と税金は切っても切れない関係にあります。投資対象によって税金の計算方法が違いますし、いつどのように売買を行うかで税率が変わってくることもあります。損失を他の収入と相殺することができるものやできないものもあります。また、関連税法が頻繁に変わり常に最新の情報をつかんでいないと思わぬ損失となることもあります。一方で、多くの人は税金について疎いです。確定申告がとか所得税とか相続税とか住民税とかの用語を断片的に聞いたことがあっても理解していない人は多く、事業をやっている方でも確定申告は税理士さんに任せっきりと言う人もいます。それと言うのも学校では税金があることは学んでも内容について詳しく学ばないし、サラリーマンの多くは確定申告をしないので消費税位しかなじみがない!という人が多いのです。
 結果、無知により脱税している人(掛け持ちでバイトしていてトータルでは比較的収入があるのに源泉徴収されていないなど)もいるかもしれませんし、うまく対応すれば税金を大きく減らせる可能性があるのに行っていないということもあるかもしれません。
 なお、本記事では国税庁等の各種の税に対する情報などから得られる一般的なルールを記載したもので、個別的な節税について指南するものではありませんので、各自の状況に合わせて節税等を検討する際は税理士の方にご相談ください。

税金についての知識の必要性

 投資をして収益が上がると税金を納めねばなりません。株や銀行預金の利子などは源泉徴収される仕組みがあり確定申告なしでも問題ないため十分理解せずともやっていけるかもしれません。しかしながら、税金についての知識を持つと持たない人に比べて投資に関しての技術的な選択肢が広がり、手元に残るお金を増やすことができます。不動産業者の方の節税になります!という話もよくありますが、そららについて自分の頭で考えてその価値を考える素養ができます。

 税金を考えるうえで必要な知識はたくさんあるのですが、投資に必要な知識としては
 ・所得と収入
 ・総合課税と分離課税
 ・所得税の種類と住民税
 ・損益通算と損失繰越
 ・各所得の理解(所得算定時の控除や計算)
 ・所得控除の理解(種類と計算)
 ・税額控除の理解(種類と計算)
 ・総合課税の理解(計算)
 このくらいでしょうか。たくさんあって大変そうですが、基本的な概念と投資に応じた知識に分かれるので投資対象に合わせて覚えていくというのが簡単だと思います。株式を特定口座で投資して利益が出ている場合と言うのが一番簡単で覚えることはほとんどありません。一方で暗号資産に投資する場合は税金が高くなりがちですが、節税したい場合は知識の総動員が必要となり一番覚えることが多くなると考えられます。以下では最低限持つべき知識についてだけ説明しておきます。

所得と収入

 よく所得と収入を理解していない文書や会話に出くわすことがあります。収入と所得は違うということまで理解していても何が収入で所得とは何かを理解していない人はたくさんいるように感じられます。例えばサラリーマンは給料をもらいます。ではこの給料について収入、所得とはどの部分を指すでしょうか。年間給与1000万円~という募集があったとして、この1000万とは何でしょうか?結論から言えば、これは収入ですよね。では、会社から通勤手当が出ると思いますがこれは収入でしょうか。一般的にはこれは収入ではありません。一般的にと言ったのは月15万円までは収入扱いではないためです(月15万円以上通勤費用が必要な人やそれを出してくれる会社どちらもなかなかないですよね)。年間給与1000万として口座に振り込まれる年間の金額は1000万にはなりません。社会保険料などが惹かれていることはもちろん、前年度の住民税が引かれ、所得を計算してその所得税が源泉徴収されている(年末調整含む)からです。ここで出てきた”所得税”という言葉にある通り所得とは収入から何らかの計算をして出されるものです。所得の意味合いは収入から経費を差し引いた収益に相当する部分ということです。この収益に相当する部分の計算方法を所得ごとに定めています。先ほどの給与収入に対しては、給与収入の金額に応じて給与所得控除というものを計算するルールが定められており、給与収入ー給与所得控除=給与所得 として計算することになっています。他にもいろいろな所得がありますが 各所得ごとに計算ルールが定められており、収入>所得となります。

総合課税と分離課税

 税金のかかり方には大きく分けて総合課税と分離課税の2種類があります。これは、いろいろな所得がありますがそれらの所得に対してどのように課税するかというルールです。総合課税は、いろいろな所得をすべて合算して(さらに全体としての各種所得控除をして)、それに対して税率に基づき税を計算します。一方で分離課税は特定の種類の所得に対して他とは分離して個別に税を計算するものです。
 分離課税のものは基本的に分離課税内での調整しかできないため、損失の繰越や同所得内での損益通算といった節税方法を考えざるを得ませんが、総合課税の場合は総合課税を生かした他の所得との損益通算を行う可能性がでてくる点が異なります。

所得税の種類と住民税

 税金には所得税、住民税以外にも贈与税や相続税、消費税などがあります。事業をやっていたり資産がある人は、贈与税、相続税、消費税など様々な仕組みを活用して節税する方法を考えることが多いですが、ここでは所得税と住民税についてだけ考えてみます。所得税は2月中旬~3月中旬に話題になる確定申告でなじみがあると思いますが、いろいろな稼ぎ(所得)に対する国の税金です。一方で住民税は、住んでいる都道府県と区市町村に対する税金(都道府県民税と区市町村民税)にわかれ、それぞれ所得に対する住民税(いわゆる所得割)と均等に負担する住民税(いわゆる均等割)に分かれています。住民税の所得割の計算方法は、所得税の計算方法に似ていますが数字などちょっとずつ異なる部分があります。
 所得税の種類は、その生じ方や規模等によって以下の10個に分かれます。説明は所得に対する一般的な収入の例です。
 1.給与所得・・・・・サラリーマンやパート・アルバイトに対する給与
 2.不動産所得・・・・不動産を賃貸することで得られる賃料(マンション賃料収入)
 3.事業所得・・・・・個人事業主が事業として行っていることでの収入(個人事業として行っている副業)
 4.配当所得・・・・・株の配当金収入
 5.退職所得・・・・・サラリーマンの退職金による収入
 6.利子所得・・・・・お金を預け(貸し)たことによる利子の収入(少人数私募債など)
 7.譲渡所得・・・・・所有しているものを売却(譲渡)したことに対する収入(株式、不動産売却、金など)
 8.山林所得・・・・・山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡する収入(5年以内の短期を除く)
 9.一時所得・・・・・仕事や資産譲渡に該当しない継続的でない一時の所得(生命保険の一時金)
 10.雑所得・・・・・・他に該当しない所得(匿名投資組合、ソーシャルレンディング、暗号資産、先物取引の収益)

 一部は()内に例を示しましたが、山林所得以外はサラリーマンでも投資をしていると申告する可能性のあるものです(副業的に山林所得が発生するような方も出てくるかもしれませんが)。これらの所得区分の中には所得税の計算においてさらに細かく分かれるものもあります。たとえば、譲渡所得は譲渡したものが、土地・建物の場合、株式等の場合、その他の場合で計算方法が異なります。
 これら所得の個別の計算ルールと総合課税、損益通算、損失繰越などを組み合わせることで節税方法を考えることができるようになりますので、この所得区分があり投資対象によってその所得区分が変わるということをよく理解してください。

まとめ

・投資や資産運用する上で税金の最低限の知識は持っていた方が得
・投資する対象に応じて知識を少しづつつけていけばよい
・収入と所得は違うので区別する
・所得の種類ごとに所得額の計算方法はルール化されている
・複数種類の所得を合算して課税する総合課税と個別に課税する分離課税がある
・所得税は国税で対象として10種類の所得があり投資対象など収入をどう得るかでその区分が変わる
・住民税は住んでいる都道府県と区市町村に支払う税金でそれぞれ所得割と均等割がある

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