税金

投資と税金(最低限の知識2)

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 前回、税知識の必要性と最も基礎的な概要について説明しました。今回は総合課税というものを見ていきます。総合課税の知識を利用した節税(あるいは課税の繰り延べ)は有利な資産運用で必要となる知識なので、基本的な概念を理解しておきましょう。なお、ここに記載の内容はあくまで一般的な仕組みを説明したもので、税に関するルールの正しい適用の判断は税理士・税務署の方に確認しましょう。

いきなり確定申告!すると・・・

 確定申告書作成コーナーを利用すると税知識がなくても指示に従って必要なデータを入力していくことで確定申告書を作成できるようになりました。もちろんそれでも構わない・・・・というか既に終わってしまった年の入力なので後から節税したりはできないのですが、作成してみて初めて税金がいくらになるかわかるというのは残念なことです。年度内であれば税金の概算額を確認しながら節税も含め調整ができるからです。

 とりわけ総合課税の部分は多数の項目が利用できるので事前に把握・想定しておくことに意味があります。確定申告書作成コーナーを利用すると、申告書に手書きで計算して入力するのと違い自動的に算出できます。税額などは何がどうなっているのかは把握しにくいですが、総合課税に該当する所得の構成などは画面を見るとわかりやすいので参考になります。以下は、確定申告書作成コーナーの総合課税の所得に関する収入と所得欄の表題を抜粋したものです。

 上から事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得、譲渡所得、一時所得となっています。おそらく山林所得を申告する方がほとんどいないため山林所得の項目がありません(山林所得のある人は確定申告書作成コーナーを利用できません)。また譲渡所得だけ総合というのがついていますが、これは分離課税の譲渡所得と総合課税の譲渡所得とを区別しているものと思います。雑所得にも分離課税(先物等)のもの、配当所得も分離課税の選択ができるので全体的な名称の整合性は取れていないのですが、細かい所は気にしないことにしましょう。
 ここで注意すべきは雑所得です。暗号資産取引や多くの副業その他の簡易な資産運用はこの雑所得になりますが、雑所得全体で損失が出た場合は他の所得と損益通算ができません。また、所得控除もないため、その年に稼いだらダイレクトに税金が増えることになります。
 逆に損益通算ができるものは「富士山上 → 不事山譲」とよく言われます。これは不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの頭文字をとったものです。これらの所得は他の所得(例えば給与所得や雑所得などは必ず0以上になる)と損益通算(マイナスが出たら他の所得の利益と相殺できる)ができるのでうまく活用すると税金を減らすことができます。

損益通算には順序がある

損益通算の計算にはルール(順序)があります。
1.利子所得・配当所得・給与所得・雑所得から「不動産所得と事業所得の損失」を差し引きます。
2.一時所得から「(総合課税の)譲渡所得の損失」を差し引きます。
3.上記を算出した後プラスとマイナスとなる場合、1と2で差し引きします。
4.3でもまだマイナスがある場合、山林所得、退職所得の順に損益通算します。

なお、不動産所得の土地に関する借入金利子の部分や総合課税の譲渡所得でも生活に通常必要でない資産の譲渡では損益通算ができないなど細かいルールが別途あります。

投資をする上でよく利用されるのは、多額の給与所得がある人が不動産所得の赤字で節税するなどがあります。このような仕組みがあるから節税(あるいは課税の繰り延べ)ができるということを理解しておきましょう。

投資対象と税金

 ルールが分かった上で自分が得ている収入がどの区分に該当するか理解していないと調整ができません。大概の人の副業や資産運用は、総合課税の雑所得、不動産所得、事業所得か分離課税のもの雑所得、譲渡所得に該当します。この中で損益通算で他の収益を減らせるのは不動産所得と事業所得になるのでこれを活用するのが一つ基本的な考えとなりますね。よくあるのが不動で築古中古アパートの減価償却費で会計年度の不動産所得を大きく赤字にして高い給与の方の所得を減らす手法です。この手法の場合、所有する不動産の簿価が急激に下がっていくので不動産を売却したときに譲渡所得が大きくなりがちですが、期間トータルで同じ所得だったとしても不動産の長期譲渡所得の税率と総合課税でかかる税率に差の分は得をするということになります。
 雑所得については雑所得内での損益通算はできますので大きな利益が出ている場合に損を出すことができる対象があればそちらを利用するという方法も考えられます。近年、貸付業者の倒産などトラブルの多いソーシャルレンディングの損益は総合課税の雑所得に区分されるものと言われています。元本を大幅に棄損した損失として確定し年度内で清算されていれば同じく雑所得とされる暗号資産の利益を雑所得内で損益通算するということが一例として考えられます。
 このように投資対象ごとにどの税区分に該当するかを事前に把握し、どのように税金をコントロールできるか考えコントロールします。法人では当たり前にこのタックスプランニングを行いますが個人の方も事前にある程度検討して調整することが可能です。もちろん、正しい計算の為には税理士の方に相談することも必要です。

まとめ

・いきなり確定申告すると節税をコントロールできない
・総合課税に該当するものを把握しておく
・総合課税内で損益通算できる所得は、富士山上→不事山譲(不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得)
・損益通算にはルール(計算順序)がある
・投資対象ごとにどの税区分に該当するか事前に把握して、どのように税金をコントロールできるか考えておく

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