暗号資産

資産運用対象としての暗号資産

投稿日:2021-04-22 更新日:

 暗号資産(仮想通貨)が暴落を挟みながら今年になって大きく上昇しています。暗号資産に大きく資産を振り向けていた人は、この1年足らずの間に資産を何倍にも膨らませた方も多いはずです。暗号資産として最も有名なビットコインは昨年4月に80万円未満で買えたものが一時期700万程まで上昇し現在でも7倍以上の590万程で取引されています。海外取引所での取り扱いとなるドージコインは0.3円未満だったものが41円まで上昇し実に100倍以上になっています。このような激しい値動きをしている暗号資産を資産運用の対象として考える場合にどのような点に留意すべきか考えてみましょう。

資産運用として考えるべきポイント

 あらゆる資産について言えることなのですが、投資をするとどのような管理が必要となり、どのようなリスクがあり、どの程度の変動をもたらすかという理解が必要です。これらを考えるベースは以下の3点です。

投資対象(暗号資産が何か)

 暗号資産についてよく理解せず取引している人が多い印象があります。暗号資産にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴(機能、利用方法、管理方法、めざすものなど)があります。ビットコイン(BTC)などは、近年デジタルによる価値保存手段として浸透してきたこともあって機関投資家なども参入してきていますが、マイナーなコインは実態が本当に機能しているのか疑わしいただ単にトレードの対象として乱高下しているようなものもあります。いずれにせよ暗号資産はあくまでデジタルデータであり、金のように実物があるわけでも何か裏付けがある訳ではありません。資産運用として暗号資産に取り組むのであれば、それぞれの暗号資産がどのようなものかを理解しておくことが必要です。暗号資産の中にはエアドロップで配当相当の暗号資産を受け取れるものなどもあります。

取引方法(暗号資産取引所)

 暗号資産の取引を行うには一般に暗号資産取引所での取引を行う必要があります。取引所には国内で登録されている取引所のような中央管理型(CEX)の取引所の他にDEXと呼ばれる分散型取引所があります。海外の中央管理型の取引所もあります。実際の所どれを使用しても売買は可能ですが、取引所により様々なリスクがあります。
 実は国内で日本人を対象として暗号資産の取引仲介等を行う取引所は金融庁登録が必要です。海外の中央管理型取引所も日本人を顧客に持つならば金融庁登録が必要となります(DEXについてはアプリやシステムを提供した組織なりが届け出する必要があると考えられますが明確な情報がありません)。とはいえ、多くの人が海外取引所やDEXを使って取引しています。これはKYC(本人確認)を行わなくても取引ができる取引所がほとんどだからです。相手が日本人かどうかわからず、日本人向けに広告も出さなければ日本人を対象にしているとは言い切れない状況ができてしまっています。
 取引には株と同様、現物の取引の他に信用取引があります。国内取引所では信用取引のレバレッジが2倍に引き下げられています。

価格の変動と流動性

 価格がどの程度変動するのか(ボラティリティ)を把握することも必要です。暗号資産の場合、価格制限のようなものが実質ないので一日で半値になることもあります。実際30%程度の変動は比較的よくあります。信用取引のレバレッジを4倍にできた場合、その瞬間に元本がなくなりマイナスになる計算です。
 流動性は使用する取引所や取引する暗号資産の種類で大きく変わります。取引量の少ない暗号資産で大きく価格が変動したときに保有量が多いと値段を崩さずに売って利益確定することが困難な可能性があります。

税制

 当然ながら、暗号資産取引の税制について理解することが必要です。個人の暗号資産取引による税金は一般には雑所得として課税することとなっています。事業として暗号資産関連の取引を行っている(例えば商品の支払を暗号資産で受け取っているとか暗号資産マイニングを事業として行っている)場合はこの限りではないと考えられますが税理士や税務署に相談して確認があるでしょう。
 課税対象となる暗号資産取引は暗号資産と日本円の交換だけではなく、暗号資産同士の交換も交換時点で課税対象となりますし、暗号資産で物品を購入した場合も課税されるなど、税計算が複雑になりがちです。
 個人が暗号資産を複数回にわけて購入・売却した場合の取得単価の計算は現在では基本的に総平均法とされたため売却を期初に行っていても12月末まで実際の所得が確定しません(12月末に購入すると年間の平均単価が変動する)。移動平均法での申告をする場合には届け出が必要です。一方で法人は移動平均法での申告が基本となります。総平均法での申告は比較的簡単ですが、移動平均法の計算は非常に面倒な部分があります。株の確定申告のような特定口座もありませんので自分で複数の口座(やウォレット)の情報を合算して計算する必要があります。
 特に海外口座やDEXでの取引で暗号資産同士の交換を行った場合に日本円レートを算出して税額を計算するのはかなり面倒な作業となります(日本円レートがない暗号資産同士を取引する場合だと、さらにBTCなど他の暗号資産から間接的に円貨を求める必要があると考えられ手間が増えます)。これらを含めた確定申告向けのサービスを展開する企業もありますので、それらを利用することなども含め追加コストが発生する可能性があります。

考えられるリスク

これらの前提を理解した上でリスクを考えると以下のようなものが考えられます。

取引所閉鎖リスク(信用リスク含む)

 特に海外の取引所に言えることですが突然閉鎖する可能性があります。これにはハッキングで取引所が運営できなくなることもあれば、なんらかの法規制で取引所を閉鎖させられる可能性もあります。
 実際、韓国の多くの取引所が法規制に対応しきれず閉鎖することが見込まれています。ニュージーランドのCryptopiaはハッキング被害もあり顧客資産を預かったまま閉鎖(倒産)し返金はなされていません。

詐欺リスク

 5年ほど前の仮想通貨ブームの時によくあったのですが新規暗号資産のICOによる詐欺が良くありました。実体のない通貨を立上げて一般に販売を行い、暗号資産を集めるものです。日本では現在、届出のない業者が暗号資産を販売することはできないので減ってはいますが、海外通貨を代理店販売するなどの名目で詐欺を行っていると思われるところもあるので注意しましょう。

価格変動リスク

 暗号資産そのものが価格変動の大きいものであるというのが現状ですが、値幅制限もないため注文ミスなどによるものか一時的にフラッシュクラッシュと呼ばれる大規模な下落もありえます。

流動性リスク

 保有ポジションを解消するのに十分な流動性がない取引所や暗号資産だと保有ポジションを解消するために価格を大きく変動させてしまい自分の売買で損失を広げたり利益を大幅に減らしてしまうことがあります。

課税額リスク

 暗号資産の税金計算は複雑になりがちで、また雑所得のため課税が莫大になる可能性があります。特に海外取引所やDEXなどを使用していると、この計算がより複雑になります。雑所得の場合、損失を繰り越すことができないため取引を計画的に行って、この課税額をコントロールしないと複数年では同じ収益のはずなのに税額が大きく異なるということになります。

投資対象として暗号資産はどうすべきか

 これらを踏まえた上で暗号資産に投資を行うことを考えた場合には、次のような結論になるのが妥当であると考えます。

何をどこで取引するか

 非常にリスクの高い資産であるため、そのリスクをできるだけ抑えるため、取引対象暗号資産はメジャーで流動性の高いものに限定するのが良いでしょう。もちろん全て失っても全く問題なく宝くじを買うような気持で買うという場合(投資という感覚ではない場合)には、この限りではありません。ここでメジャーなものと言えば多くの取引所で取引が可能で、ビットコイン(BTC)、イーサリウム(ETH)、リップル(XRP)などが考えられます。
 対象通貨としては日本円(JPY)との間の取引にすれば税額計算が比較的楽になります。暗号資産同士の交換ができる取引所もありますが、税額計算が行える仕組み(サービスの利用を含む)を整えてからのほうが良いでしょう。
 また、利用する取引所としては国内で届出をしている取引所に限定することが望ましいです。基本的に総平均法で計算するための年間取引報告書の取得ができるため申告の準備が比較的楽になりますし、トラブル時にも日本語でのやりとりができます。海外取引所の場合はトラブルや閉鎖などがあった場合には、英語を使ってやり取りする必要性があることがほとんどです(英語が得意なら問題ありませんが)。

どのくらいのボリュームで運用するか

 資産変動が非常に大きいため非常にハイリスクです。”運用資産”額の10%以下できれば5%以下(安全性を重視するなら3%以下)にとどめることをお勧めします。暗号資産、特にビットコインなどには機関投資家が価値代替手段として大きな資金が入ってきている(2月にはテスラ社がビットコインに15億ドル投資したことがニュースになりました)ことから考えても、その重要性は増していく上に有限なため長期的に見ると価値が高まる可能性は強いです。一方で、将来的に価値代替手段として別のものに置き換わっていく可能性や大規模なハッキングによる暴落などもあり得るため、万が一価値が0になっても大きな損害とならない額とすべきと言うことです。例えば、運用資産額の残りの95%を年率5%強で運用することができると暗号資産の損失分を1年ほどで取り返せるレベルまでリスクを下げられる一方、1年で10倍になれば全体の1/3ほどの資産にまで膨れあがります(もちろん途中でリバランスをすべきと考えます)。
 これはあくまで目安です。本人の性格や投資に対する成熟度によって運用しないという選択肢ももちろんありますので、ご自身の考えで判断することが重要です。

まとめ

・暗号資産は値動き含め様々なリスクがあり、そのリスクが非常に大きい
・国内取引所でメジャーな通貨に限定して行うなどで各種リスクを軽減することを考える
・確定申告までの流れ(計算など)を理解した上で売買を行う。
・運用額は運用資産がくの10%以下できれば5%以下(安全性を重視するなら3%以下)を目安とする
・本人の性格や投資の成熟度に応じて運用しないという選択肢も考える
・最終的な判断はすべて自分で行う

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